深呼吸しよう

慌ただしい現代生活の中に深呼吸できるすきまを与えてくれるようなカルチャーを紹介するブログと思いきやただの備忘録

エレクトロニカの日本人アーティストおすすめ3選/自分のこころを表明することについて

わたしの好きなエレクトロニカの日本人アーティストについてご紹介します。ただ今回ご紹介するのは、普段からエレクトロニカに親しんで聴いているかたには常識的な?ミュージシャンといえるとおもいます。ただ海外のツアーを成功させたりしているのに対し、なんとなく日本国内での活躍より海外での高評価がめだつ気がするのもまた事実です。本当にすばらしいミュージシャンばかりなのでもっとあたりまえに評価されますようにという願いをこめておすすめとさせていただきます。

 

Ametsub

昨年2016年にはアメリカのFaltyDL主宰のレーベルBlueberry Recordsからシングルがリリースされるなど国内外で高く評価されているAmetsub氏です。

サンプリングされた音で構成された複雑なリズムパターンと物憂げでうつくしいメロディで聴き飽きない曲です。

 

Yosi Horikawa

2014年にRed Bull Music Academyがはじめて東京でおこなわれ、そのキャンペーンビジュアルの1人に起用されて東京の街中のあちこちに貼られていたことがまだまだ記憶にあたらしい、ヨシホリカワ氏です。

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環境音をサンプリングして構築的に重ね合わせた音作りが印象的です。インターネットにあがっている全曲を貼りたいくらいにすべてが素晴らしいですがなかでもわたしのいちばん好きな曲、Bubblesをお聴きください。

ビー玉みたいなものやピンポン玉みたいなものがやたらと落ちてきます、ともすれば雑多な音のノイズとなってしまいそうですが、生活のなかで親しんだ音が計算されて配置されることで「音楽」になるということ、そういう回りくどいことをとっぱらっても純粋に曲としてすばらしいです。もっともっと高く評価されてもいいはず。

48分のLIVE SETです。時間があるときに見てください。

Daisuke Tanabe

たまに、すべてのリリースを追いかけたくなるくらいに夢中になるレーベルを見つけます。Ki Recordsというドイツのレーベルもそのひとつでした。Ki RecordsからリリースされたFloating Underwaterというアルバムに出会ったことでDaisuke Tanabe氏の名前を知りました。

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🇩🇪Ki Recordsのサイト

ki-records.com

なかでもこのNight Fishingという曲は途中からの展開がとても美しいです、まるで天国みたいに。釣りをしたことはいっさいないのですがこういう感じの静寂と高揚感があるのかなとおもう。

このインタビュー、日本でインディペンデントな表現活動をする難しさについて考えさせられました。

www.redbullmusicacademy.jp

日本人アーティストと長年インタビューを行ってきた中で繰り返し話されてきたテーマが、 個人主義が重んじられず、長時間労働が常識とみなされる日本という国でクリエイティブなライフスタイルを選択する難しさだ。「今でも日本でアーティストになるのは良いアイディアだとは思いませんね」冗談交じりにTanabeは言う。「上の世代は僕たちの音楽やカルチャーを理解する必要性をあまり感じていませんし、音楽をアートだとも思っていません。一方で若い世代はアーティストが良い生活を送っていると考えていて、現実を誤解しています」Tanabeは、国内である程度のライブ経験を持っているものの、正式なツアーを組んだことはない。一方で、ここ3年間でヨーロッパ、東南アジア、オーストラリアを回っている。

日本で表現活動をすることのむずかしさは、単純に「世間の評判=作品の価値」としてしまいがちな風潮(長いものに巻かれちゃう)のほかにも実は労働とか雇用とか賃金とか、そういう働き方の問題とも関わっているのかなとおもう。創作者側の、表現活動と生活を両立させることのむずかしさと同時に、鑑賞者側にとっても、「自分の感情をだいじにする」という非効率的なアティチュードが鑑賞行為の根幹だとおもうけど、そういう余裕がゆるされていないんじゃないかともおもう。あまりインタビューの内容と関係がないけれど。

感動すること・こころを動かされることに敏感であることはたましいの純度がたかいとおもうし、その純度を保つための、ごくちいさいアクションとしてわたしは自分が「よい」とおもうことを書き綴りたい。自分と、自分と似たようなものが好きなひとのため、そういうものに出会うまえの人のために。

そしてわたしはひとが「よい」とおもうことを綴られたものが読みたい。批判や否定じゃなくて。好みの問題はあっても、ほんとうにクオリティがだめな表現なんて世の中にひとつもないんだ。ものの見方の角度の違いでしかない。

話が脱線したけれど、こちらも48分のLIVE SETです。

このむだに長い文章をここまで読んだかたは、きっとわたしとおなじようなものが好きなんだとおもう。自分が「よい」とおもうものを探して、掘り出して、愛でましょうよ。これからも。「きらい」とおもうものより「よい」とおもうもののほうが世界には多い。語りつくせないくらいに。